teacup. [ 掲示板 ] [ 掲示板作成 ] [ 有料掲示板 ] [ ブログ ]

 投稿者
  題名
  内容 入力補助画像・ファイル<IMG> youtubeの<IFRAME>タグが利用可能です。(詳細)
    
 URL
[ ケータイで使う ] [ BBSティッカー ] [ 書込み通知 ] [ 検索 ]


2―5

 投稿者:レイモンド・ベンソン  投稿日:2009年 3月14日(土)10時50分44秒
返信・引用
  「彼女は?」彼は尋ねた。

「ドクター・ナオミ・ハンターだ。このユニットの主任医師だよ。遺伝子治療の専門家でもある」

彼女はスネークに注射の針を向けた。「ちっとも痛くないから、心配しなくても大丈夫よ」

「なんの注射だ?」

「すぐに説明するわ」彼女はスネークの腕を消毒し、彼が抗議するまえにさっさと針を突き刺した。

「くそ、大佐。俺はまだ引き受けても――」

「静かに。すぐ終わるわ」

注射が終わると、ドクター・ハンターは後ろにさがったが、そのまま部屋に残っている。大佐は説明をつづけた。「彼らはべつに遺体が欲しいわけではない。ビッグボスの遺伝子情報を持つ細胞が欲しいだけだ」

「なんのために?」

「遺伝子治療に使うのよ。自分たちの能力を高めるために」

イギリスのレディとは言えないまでも、アイビー・リーグ出身であることを仄めかす洗練されたアクセントで、ドクター・ハンターが言った。「彼らはその細胞で自分たちの次世代特殊部隊を強化できる。軍の上層部は、完璧な兵士を作るために必要な遺伝子を確定しようとしてきたわ。それが分かれば、ごくふつうの兵士たちが――」

「超人的な能力を持つことになる」

「ええ。これまでのところ、ビッグボスのDNAからは、そういう"ソルジャー遺伝子"が六〇種ほど発見されているの」

スネークは驚きに満ちて首を振った。「すると、遺体は結局、回収されたのか」

キャンベルが言った。「ああ。彼の細胞は冷凍室で保管されている。それが持つ遺伝子情報は、はっきり言って、計り知れない価値があるのだよ」

「軍にとってはな」

「ビッグボスの遺体はあっさり手渡すわけにはいかんのだ。その理由は、きみにもわかるはずだぞ。あれが、敵の手に渡れば、どんなWMD(大量破壊兵器)よりも有益な武器になる」

ドクター・ハンターが付け加えた。「彼の遺体はひどく焼かれていたけど…遺伝子情報を修復するには、たった一本の毛髪で充分だから」

「そのテロリストというのは、誰なんだ?」

ドクター・ハンターが答えた。「彼らは自分たちを"ビッグボスの息子達"と呼んでいるわ」

キャンベルは言った。「六人の鍛えぬかれたフォックスハウンド隊員だ。かなり荒っぽい面を持っている。リーダーはフォックスハウンドの実戦部隊リーダーだった男だ」→2―6
 
 

2―4

 投稿者:レイモンド・ベンソン  投稿日:2009年 3月 8日(日)10時56分21秒
返信・引用
  このところ女っ気なしだから、大佐が気を利かせて可愛い看護師でも送ってくれるのか? 女を最後に見たのはいつだったか、思いだせないくらいだ。

ショーツ姿――大好きなバンダナは取らなかった――のまま一五分待たされたあと、スネークが友人と呼ぶ数少ない男のひとりが、部屋に入ってきた。彼はスネークが以前所属していたフォックスハウンドの元司令官で、スネークが自発的に引退したあとも、ふたりの友情はつづいている。

「スネーク、元気そうだな」

あんたは老けた、とロイ・キャンベル大佐に言うのははばかられた。なんと言っても、大佐はすでに六〇代だ。大佐はいつものようにグリーンベレーの軍服を着ているが、彼はもうそのエリート部隊には所属していない。
「どうも。あんたは…疲れているようだな」

キャンベルは肩をすくめた。「この仕事に疲れはつきものさ」

「ご機嫌でブルーベリーを摘んでいる夢を見ていたところを邪魔されたんだ。いい話だろうな」

「すまん、彼らは少々荒っぽかったかもしれんな。スネーク、われわれにきみが必要なんだ。これはいい話ではないが、大きな仕事だ」

「しかし…」

「スネーク、われわれは深刻な事態に直面している。この危機を解決できるのはきみだけだ」

「俺は引退したんだ。もう命令は受けない」

「とにかく話を聞いてくれ。きっと気が変わるとも。フォックスハウンドが分裂したことは知ってるな。次世代特殊部隊の多くが結託して、テロリストになった。そうとも、彼らはテロリストだよ。ほかに適切な呼び方はない。自分たちが欲しいものを、手段を選ばず手に入れようとするテロリストだ」
「それで?」

「およそ五時間まえ、シャドー・モセス島にあるわが国の核兵器廃棄処理施設が、元フォックスハウンドのメンバーが率いるテロリストの一団に攻撃され、占拠された。彼らは人質をとって、政府にビッグボスの遺体を引き渡せと迫り、この要求が二四時間以内に受け入れられないときは、核弾頭ミサイルを発射すると通告してきた」

スネークの顔を翳がよぎった。「ビッグボス…つまり、俺の――」

「ああ、きみの父親だ」

スネークはけげんそうに眉を寄せた。「彼らはなぜ…遺体を欲しがってるんだ?」

白衣を着た女性がさわやかな笑顔で部屋に入ってきた。注射器を持っている。魅力的な女性だ。たぶん二〇代の後半だろう。

ようやく看護師の登場か!→2―5
 

2―3

 投稿者:レイモンド・ベンソン  投稿日:2009年 3月 6日(金)08時22分37秒
返信・引用
  黒いコンバットスーツに身を包み、アサルトライフルで武装している。

「あいつらはいったい誰だ?」スネークはつぶやきながら、テーブルから防弾チョッキを取り、腕を通した。最後のストラップを留めたとき、ベッドルームのドアの向こう側で足音がした。さきほどの男たちが、隣の部屋に入ってきたのだ。スネークはドアの横にはりつき、銃を構えた。

「戦闘員ソリッド・スネーク!」ひとりが叫ぶ。「われわれはきみの友人だ! 武器を捨てろ! キャンベル大佐の命令でここに来た!」

キャンベルだと? いったいどういうことだ?

おそらく彼らは、赤外線熱画像装置を使い、ドアのこちら側で銃を構えている彼を探知しているにちがいない。それにスネークがアラスカの荒野にあるツインレイクの近くで、まるで世捨て人のように暮らしていることを知っているのはキャンベルだけだ。彼はしぶしぶ拳銃をテーブルの上に置いた。
「これからきみの部屋に入る。両手を上げ、動かないでもらいたい!」

スネークはこの要求にしたがった。

ふたりの戦闘兵がベッドルームのドアを蹴り倒して駆けこみ、スネークにライフルを向けた。

「踏み倒さなくても、ドアの鍵はかかってなかったぞ」スネークはぼやいた。

「着替えをしてもらいたい」男のひとりが言った。「大佐が待っている」

スネークは重いため息をついた。「くそ。こんなことをするとは、よほどの理由があるんだろうな」

五分後、スネークと六人の兵士は、一〇〇メートル離れた場所に待機しているヘリコプターへと、降ったばかりの雪のなかを向かっていた。今朝は風が強いせいで、ヘリの音が聞こえなかったのだろう。大きな嵐が近づいている。

それからの数時間は、あっという間に過ぎた。ヘリは海上へでると、キャンベル大佐がベーリング海で動く基地として使っている潜水艦SSBN-732ディスカバリー号の甲板に降りた。男たちはスネークを先導して潜水艦の最深部へと向かい、一見したところ医務室のような部屋へと導いて、いくつか検査を行うので下着になるように、と告げた。

「冗談じゃない」

「あなたに選択の余地はありません」男のひとりが言う。「黙ってしたがってください」

彼らが出ていくと、スネークはおとなしくしたがうことに決め、しぶしぶ服を脱ぎながら皮肉たっぷりに思った。→2-4
 

2―2

 投稿者:レイモンド・ベンソン  投稿日:2009年 3月 5日(木)09時35分33秒
返信・引用
  ところが、スネークが申し分ない体調で、いつでも任務に復帰できる状態だったために、みすみすキャンベルの思う壺にはまり、またしても駆りだされるはめになってしまったのだ。地の果てに逃げだしてまで避けようとした仕事だというのに。

だが、目的のドックを目指す途中で、激しい海流にでくわしたときは、完璧な体調であることを神に感謝した。彼は必死に流れに逆らい、呼吸に集中し、目標達成をはばむ最初のハードルをクリアするのに必要な筋肉組織を動かすことに集中した。その結果、予定より数秒早くドックに到着し、その間に体力を回復させながら、自分のいる位置を確かめた。

シャドー・モセス島だ。第一関門を突破した。

コードネーム・ソリッド・スネークは、静かに、ゆっくりと海面の上に鼻までだすと、桟橋をじっと見た。投光照明が一帯を照らしているが、凍るような強い風のせいで、全方向の視界が悪い。荷物の積み降ろし用ドックに人影がないのを確かめ、スネークは支柱のひとつにしがみついた。そして石の上を横切るサンショウウオのように、支柱をよじ上り、桟橋に上がって、海水濾過槽の横へとすばやく移動した。そこなら、敵に見られる恐れはない。彼は酸素ボンベと足ひれをはずし、濾過槽の横に置いた。

これでよし。ひと息入れて体力を回復しよう。くそ、煙草が欲しいな。

スネークは目を閉じ、リラクゼーション・エクササイズをしはじめた。六〇秒後には、疲れがすっかり取れているはずだ。

彼はときどき、瞑想中に少しまえに起こった出来事を思い返すこともある。これは任務を明確にする助けにもなる。


一二時間前
頭のなかで警報が鳴り響いたとき、スネークは世界最長でもっとも厳しいアイディタロッドの犬ぞりレース、"グレート・アイディタロッド"をめざして訓練中のハスキー犬に餌をやる時間だと思いながら、ブルーベリーとサーモンベリーを摘んでいる夢を見ていた。

彼はがばっとはね起きて、夢のなかに入りこんできた音を聞きとろうと耳をそばだてた。

あれだ。足音。キャビンの外で誰かが何かを踏んだ音だ。

どうして犬が吠えないのか?

スネークはベッドから飛びだし、銃のクリップボードから九ミリのヘッケラー&コッホP7M8をつかみ、マガジンを装填した。霜に覆われた窓に目を凝らすと、キャビンの裏手にある木立のなかを三人の男が走ってくる。→2―3
 

2―1

 投稿者:レイモンド・ベンソン  投稿日:2009年 3月 3日(火)08時25分53秒
返信・引用
  現在

そのSDV(小型潜水艇)は、オハイオ級原子力潜水艦の魚雷発射管からとびだし、華氏零下の塩水を切って目的地に向かっていた。推進装置がないため、静かで、レーダーに捉えられる心配もない。それはドックへ泳いで達することができる範囲へと着実に近づいていく。

海水は思ったほど冷たく感じなかった。
SDVが運んでいく男は、ポリ・サーマルのボディスーツを着て、ゴーグルとスキューバダイビングの装備をつけていた。俗に"スニーキングスーツ"と呼ばれる単独潜入任務には欠かせないすぐれものが、彼を極寒の気温から保護してくれる。それに、ドクター・ハンターの説明では、彼女が打った注射にも、冷たさをやわらげるものが含まれているのだ。血液やほかの体液が凍るのを防ぐ不凍糖ペプチドが。でなければ、フォックス諸島が点在するアラスカの海中では、あっというまに凍死してしまう。

フォックス諸島はアリューシャン列島の一部で、サマルガ水路と四大山脈グループの島々のすぐ東にある。ほぼ一年中悪天候のうえに広大な暗礁があるため、航行が難しいことで有名だった。そのため、潜水艦はかなり沖に留まらねばならず、キャンベルが"正確かつ迅速な人工授精"と呼ぶ手段が必要とされたのだった。

SDVは一海里近く進んだところで、前進力を失いはじめた。岩だらけの海底に、これをやんわりと着地させるには、ちょっとした操作が必要だ。ほんの少しでも右か左にずれれば、岩に衝突する危険があるばかりか、そうなれば、敵のソナー(水中音波探知機)に捉まるおそれがある。

ポリ・サーマルを着た男、ソリッド・スネークは、速度の落ちていくSDVの操舵メカニズムを両手で安定させながら海底へと漂っていき、凍った海の底にうまく着地させた。SDVが完全に止まるのを待って、コーデック(CODEC:符号化情報通信器)をチェックし、GPS(全地球測位システム)で現在位置を確認する。それからSDVを押すようにして離れ、ドックへと泳ぎはじめた。

自宅から無理やり連れだされたときは、"引退した"あと、体調と体力をベストコンディションに保っていたのは、あまり賢いことではなかったかもしれない、と舌打ちしたものだった。もしも何キロか贅肉をつけ、毎日テレビの前でだらだら過ごしていたら、キャンベルはスネークにこの仕事を任せるのを、ためらったにちがいない。→2―2
 

1―4

 投稿者:レイモンド・ベンソン  投稿日:2009年 2月25日(水)10時11分29秒
返信・引用
  「つまり、彼女が産む…二体のうち、一体はわれわれのもの、もう一体はきみたちイギリス人のものだ。私たちのものになる赤ん坊は、私が選びたいのだが」

「ええ、あなたにはその権利がおありですわ」 クラークは両手を上げ、気持ちのよい声で笑った。「このプロジェクトの背後にある政治的な思惑は、私には一切関係ありませんから」

大統領は満足してうなずいた。「よろしい。では、私はきみがさきほど言った、優性遺伝子をより多く持つ赤ん坊を選ぶ。そちらのほうが優秀に違いないからな」

クラークはこの男の無知に深い驚きを覚えた。「その保証はありませんのよ。でも、おっしゃるとおりにしましょう。では、失礼して下に戻ります。赤ん坊が産まれるまえに――」

合衆国大統領はもどかしげにさえぎった。「さようなら、博士。幸運を祈る。引き続き報告を頼む」 彼はハウスマン将軍を見た。「行こうか」

大統領とその護衛が大きな窓から離れ、分厚い鋼鉄のドアへと向かう。クラーク博士は急ぎ足で、手術室で繰り広げられているドラマへと戻っていった。

彼女の気持ちは、めったにないほど高揚していた。何度かの試みをへて、ついにこれまでの努力が、ふたりの生きた赤ん坊という形で実を結ぼうとしているのだ。世界がこれまでに知っていた最強の戦士、究極の兵士、ビッグボス、その男の遺伝子を受け継ぐ赤ん坊が。

クラークは両手を殺菌し、手袋をつけ、手術室に入りながらふと思った。ビッグボスの細胞の残りはどうなるのかしら? それにアクセスできる人間は、彼女が信頼しているわずか数人のアシスタントだけ。大統領と軍の取り巻きたちは、まだそれが残っていることを忘れるかしら?
その可能性を思うとクラークの胸はときめいた。必要とあれば、出産に至る過程を再びたどることができるかもしれない。→2―1
 

1―3

 投稿者:レイモンド・ベンソン  投稿日:2009年 2月24日(火)09時30分10秒
返信・引用
  「私たちはアナログクローン技術とスーパーベイビー法を使ってビッグボスの細胞を再生産し、卵子に受精させて代理母の子宮に移しました」
「彼女は八つ子が産まれることを知っているのかね?」 大統領が尋ねた。
クラーク博士は大統領の思い違いを訂正した。 「彼女は八つ子すべてを産むわけではありません。ふたりだけです。このふたりの成長を促進するために、残りの胎児は何か月もまえに始末しました」

「すると、彼女はただの双子を産むわけか」

「産むのはふたりですが、正確には双子ではありません」

「どういう意味だね?」

「ふたりの子供には、ある種の遺伝的違いがあります。成功するには、それしか方法がなかったものですから」

「つまり、ひとりのほうが、もうひとりよりも優秀だということかな? 私はふたりが、あらゆる点において、まったく同じだと思っていたのだが」

クラークは首を振った。 「大統領、ひとりがもうひとりよりも優秀なわけではありません。ですが、ひとりがもうひとりよりも多く、優性遺伝子をもつ可能性はあります。でも、何ひとつ心配される必要はありませんよ」

窓ガラスの向こう、手術室のなかの新しい動きが彼らの注意を引いた。煌々と照らされた部屋は急に活気づいてきた。まるで、ステンレス製の手術用器具が反射する光が、その部屋を人工的なエネルギーで満たしたかのようだった。医者や看護師が、手術台の上で苦しむ女性を取り囲んでいる。

それを見守る三人の後ろで、鋼鉄のドアが開き、看護師が入ってきた。 「博士、準備が整いました」

クラークはうなずいた。 「ありがとう。すぐに行くわ」

「産まれるのか?」大統領が尋ねた。

「ええ、 大統領、 これからふたりの強い男の子を取りあげてきます」

大統領は首を伸ばした。 「その、 クラーク博士、出産は…あまり見たい光景ではないな。ワシントンDCで次の予定が待っているんだ。これで失礼するよ」

クラーク博士は驚きを装ったが、大統領がこう言うのは予測していたことだった。彼女は差しだされた手を握った。「そんなにお急ぎですの? これが終わったら一緒にお食事でもと思っていましたのに」

「ありがとう、博士。しかし、正直に言うと、ここはどうも落ち着かない。われわれに、この、誕生を知らせてくれて感謝する。ところで、その――私は選ばせてもらえるのかな?」
「というと?」→1―4
 

1―2

 投稿者:レイモンド・ベンソン  投稿日:2009年 2月20日(金)08時50分11秒
返信・引用
  →大統領は首を傾けた。 「博士、私はこのプロジェクトを引き継いだものの、詳しいことはよく知らないんだ。きみはどういう経緯でこの施設を使うことになったんだね?」
クラークは微笑した。 「このあたりで洞窟群が発見されたあとも、 一般に公開されたのはほんの一部だけで、あとは政府が管理していたのです。合衆国政府がこの洞窟を初めて使ったのは、第二次世界大戦の最中だったと聞いています。アメリカが攻撃を受けたときのために、ルーズベルト大統領がここに秘密基地を作ることにしたとか。それ以来、ここはいくつかのリサーチ・プロジェクトに使われてきました」 クラークは将軍に目をやった。 「ほとんどが、軍関連のプロジェクトだったと記憶していますが」
「なるほど」
「私たちがここに来たのは、六〇年代半ばでした」
大統領は窓に目を戻した。 「このプロジェクトはついに成功することになるのかな? これは……九回目の試みだね?」
「今度こそ大丈夫ですわ、 大統領」 クラーク博士はなめらかに答えた。 「私は最後に残った細胞の遺伝子暗号を修正しました。それに、ある程度似かよった遺伝子を持つ女性を代理母に選びました。 ビッグボスの遺伝子を生かし、強化できるように」
大統領は驚きをこめて首を振った。 「きみが彼の細胞サンプルを、そんなにたくさんもっていたことが、私にはまだ信じられない。彼はきみがそれをどうすると思ったのだろうな?」
「あの男は自分が子供を作れない体だということを知っていただけです。私たちがここで行っている実験のことは、まったく知りません」

「恐るべき子ども達計画のことは、だな」
「そのとおりです。ビッグボスの細胞は彼の手術を行ったときに採取したんです。彼がこのまえの戦争で負傷したときですわ。国防総省からは、たとえ成功しても、このプロジェクトの結果を彼に知らせてはならないという厳しい命令を受けています。もっとも、ビッグボスのことですから、プロジェクトのことをすでに知っていたとしても驚きませんが。私たちの活動に関するセキュリティは、必ずしも理想的とは言えませんから」

「しかし、合衆国政府が提供できる最高レベルのセキュリティだ。それはきみも知っているはずだぞ、博士」 ハウスマン将軍が言い返す。

クラーク博士はこの言い訳には答えず、言葉をつづけた。→1―3
 

1―1

 投稿者:レイモンド・ベンソン  投稿日:2009年 2月19日(木)08時02分49秒
返信・引用
  三十三年まえ
クラーク博士は静かに待合室に入り、アメリカ合衆国大統領とジム・ハウスマン将軍の後ろにたたずんだ。彼らは小声で話している。ふたりとも、手術室を見下ろす大きな窓の前にはりつくようにして立っていた。
「陣痛がはじまったのかな?」大統領が尋ねる。
「麻酔を使うと思っていましたが」将軍が答える。
「くそ、彼らが邪魔でよく見えないな」
「何が起こっているんだ? 見えるか?」  「ご心配いりませんわ、 大統領」クラーク博士は甘い声でなめらかに言った。 大統領がびくっと身体を痙攣させ、振り向く。
「きみか! びっくりしたよ、博士」白髪交じりの大統領は言った。 クラークはいつも思うのが、この大統領はカメラの前にいるときをのぞけば、とても神経質に見える。 一国の大統領が女の私を怖がるとは皮肉だこと。 彼女は笑みを隠し、陰のなかからでて、ふたりに近づいた。
「申し訳ありません。私が後ろにいるのをご存じだと思ったものですから」
大統領は神経質な笑い声をあげた。「こんなに地下深くにいるせいかもしれないな。私は少々閉所恐怖症の気があってね」
ハウスマン将軍が言った。「いつでも地上に戻れますよ」 あら、 この将軍も驚かされたことに機嫌をそこねているわ、クラークはちらっと思った。
「まもなく出産するのかね?」大統領が尋ねた。
「だいぶまえから陣痛が始まっていますから、まもなく産まれるはずですわ」
大統領は怖じ気づいたように窓に背を向け、片手を振って石灰岩の天井から下がっている鍾乳石を示した。 「あれが落ちてくることはないのかな?」
「あれは何千年もここにあるんですよ、大統領」 クラークは答えた。 「ご安心ください。自然に落ちてくることはありえません。 ニューメキシコの南東部で地震が起こる可能性も、まずありませんし」 クラークはかなり存在感のある女性だった。それと同じくらいカリスマ性もある。 シェイクスピア女優のような深い響きのある声で、イギリスの貴族のような英語を話す。
大統領はうなずいた。 「うむ。 しかし、この洞窟の壁の向こう側は、アメリカで最も人気のある国立公園で、何百人という観光客が、毎日そこを訪れていると思うと、不思議な気がするね」
「カールスバッド地域は、このプロジェクトには完璧です。 前大統領の支持でここを使わせてもらえたことは感謝しています」→
 

レンタル掲示板
/1